弘前藩よろず生活図鑑 Web版

陸奥新報紙面で掲載した内容を、
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Web版よろず生活図鑑です。
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2011.05.29

旬を採る。

歴史書に登場した津軽の春の素材と料理

津軽を舞台にした歴史書には いくつもの食の素材や料理が登場する。 それを見ると、 現在ある料理は古くからこの地に根付いている 料理であることを感じさせる。

がさえび(しゃこ)の醤油煮【春】

塩ゆでが一般的な「がさえび」だが、 『津軽道中譚(つがるどうちゅうたん)』によると 藩政時代には醤油煮で食べていたようだ。

挿絵1

山菜の煮物【春】

ふくべら、しおで、くまざみ、 さわらび、うど芽。山の幸が煮物とし て食された。(『津可呂の奥(つがろのおく)』、 『外浜奇勝(そとがはまきしょう)』)

身欠きにしんとうどの煮つけ【春】

小売り酒屋や茶屋で酒の肴として提供された。 (『津軽道中譚』)

ひらめの刺身【春】

津軽ではひらめを青葉とも呼んだようだ。 浅虫の宿では刺身で提供された。(『津軽道中譚』)

しらす【春】

鰺ヶ沢の海に注ぐ河口に四手網を仕掛け、 しらす漁を行っていた。 (『都介路迺遠地(つがろのおち)』)

松藻入りご飯【春】

藩政時代、岩崎の海士は習わしとして、 春になると松藻(まつも)という海藻を刈って干し、 米、麦、粟に混ぜてふだんのご飯としていた。 (『外浜奇勝』)

ツブナマシ【春】

年中を通して水をかけている田には、 どじょうやふな等の小魚やツブ(タニシ)、 どぶ貝などが多く棲んでいた。 明治時代まで、 3月の節句にツブナマシを作る習慣もあった。 (『岩木町々誌』)

ざっこの昆布巻き【夏】

小さな魚を昆布巻き。黒石の宿で供されました。 (『津軽道中譚』)

うにの塩辛【夏】

「卯月から五月にかけて、 久栗坂の海栗というものを採って、塩辛にする。 (中略)旅人は酒屋に入り、尻をかけ、 これを肴に酔い、 法師どもは海味噌と名付けて、しきりとなめ、 酒に酔っている」(『外が浜づたひ』)

『奥州道中記』に見る津軽の食と旬
郷土食物史愛好家 木村 守克

津軽弁で津軽の滑稽道中を記したものに 『奥州道中記』(弘前市立弘前図書館蔵) というものがある。 藩政時代が終わる直前の元治2年(1865)に 書かれたもので、 著者は自称十返舎十九の又々又弟子の 一遍四半舎二半九という、 ふざけた名前で実際の作者は不詳である。 文章はあまり上手とはいえず、 随分えげつない話も現れる。

大館から弘前に至る短い道中記で、 江戸からきた弥次郎、北八を、 大館の佐吉という者が 案内するというものである。 この道中から当時の風俗や民俗、 食生活の一部を知ることができる。 食べ物では、川魚のかじかの卵かけ、 かじかの吸い物、みずの粟漬け、身欠にしん、 とうふはんぺん、 大鰐もやしの醤油かけなどと いうものが出てくる。

碇ヶ関あたりではかじかの 玉子かけを食べている。 この頃には津軽でも 生卵がふつうに食べられていたらしい ということが知られる。 またかじかの吸い物は蓋つきで出て、 「む(う)めいえび塩梅(あんばい)」といわせて、 一番の出来物だとほめている。 かじかの吸い物など現在は 見ることもないが、 聞くところでは黒石で今もかじか料理が 食べられるということである。 幻の料理といえよう。

濁り酒も売られていた。 古懸あたりで、 茶屋の婆は濁酒を弥次郎一行に出している。 ここでは酒の肴に身欠にしんと、 春慶塗の曲げ物にみず(うわばみ草)の 漬物を出している。 弥次郎はこのみず漬をおいしいと お代わりをするが、濁酒に悪酔いをして、 蛇草のみず漬を食べ過ぎたせいと、 今にも死にそうだと大騒ぎをする。

宿川原あたりには名代の 「はんべん(はんぺん)とうふ」 というものがあった。 はんぺんとうふは、とうふをすったものに、 山の芋をすって混ぜて蒸したもので 江戸時代のとうふ料理である。 茶屋の女は「おめやも(あなたも) はんべんこかへで(お代わりして)喰えへ」と いっている。

そして『弘藩明治一統誌』にも、 所の茶屋名物として鯖石村のみず漬、 石川村の豆腐のはんぺんなどが 挙げられている。 『奥州道中記』では小栗山あたりの茶屋で 大鰐もやしを食い、 酒に酔いつぶれた同行の男に 勘定を全部押しつけて、 一行は逃げ出して道中記はまもなく終わる。 『奥州道中記』は、 食べ物に視点をおいても 味わいのある資料といえる。

挿絵1


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