弘前藩よろず生活図鑑 Web版

陸奥新報紙面で掲載した内容を、
不定期に更新していく、
Web版よろず生活図鑑です。
紙面を見逃した方も、初めて読む方も、
分かりやすい内容となっています。

2011.05.31

彩と賑わいを愉しむ

弘前の桜の歴史
弘前城に桜樹を植えた風流殿様

弘前公園の東内門そば、 「正徳桜」と呼ばれる桜が今も咲き誇っている。 この桜が植え付けられたのは正徳5年(1715)、 5代藩主・津軽信寿の時代。 『弘前藩庁日記』によれば 御家中が差し上げた11本の桜樹を城内に 植えたのが3月の末、 4月6日には「西の御郭へ桜を植え候につき 御家中より差し上げ候の覚え」として25本の桜が 献上されたと記されている。 この25本のうちの1本は八重桜であったようだ。 この年に植栽されたのは 前述の東内門そばの「正徳桜」にかすみざくら、 そして西濠の関山(かんさん)である。 これらは現在もなお、見事な花をつけている。

挿絵1

次々植えられる桜

『弘前藩庁日記』には、 信寿が矢継ぎ早に桜を植え付けたことが 記されている。 享保9年(1724)4月8日の記事には、 「先ころ二の丸と西の郭用に取り寄せた 桜を植え付けた、 この余りの五六本は北の御郭に植える」。 享保11年(1726)には、 「桜の木を所持の者は何本でもよいから 差し上げるように」との申し付けも出され、 これらの桜は西の郭や御茶屋前、 現在の弘前工業高校敷地内にあった 外馬場や南溜池の土手などに植えられた。

桜の名所にした立役者

藩政時代、それでもまだ城内の桜は 数が少なかった。 主が江戸改め東京に住み、 行政機関としての機能を失った明治時代。 手入れもされず荒廃していく旧城に私財を投じて 桜を植えたのが、 旧藩士の内山覚弥(うちやまかくや)、 そして旧藩士であり「青森りんごの開祖」として 有名な菊池楯衛(きくちたてえ)だった。 山林取締役兼樹芸方であった菊池は 私財を投じてソメイヨシノの苗木を購入、 明治15年(1882)に二の丸を中心に植樹。 しかしまだ士族の気風も強い時代の事、 「お城で宴会などもってのほか」と 折られたり伐られたり、 成木となったのはごく少なかった。 その中の1本が現在、 「日本最古のソメイヨシノ」として 見事な花を咲かせる樹である。

内山は菊池より2年早く、明治13年(1880)、 三の廓に自費で購入した桜20本を植樹していた。 菊池の試みが頓挫したのをみて、 まずは明治28年(1895)、 日清戦勝記念として1000本の桜を寄付。 さらに、市議会議員であった内山は 公園の美化のため桜の植樹を主張し続けた。 弘前公園の桜は、市民の手により植えられ、 守られてきたのだ。

挿絵2

弘前の観桜会(かんごかい)
弘前「桜まつり」初開催

明治に植栽された桜が成木となり、 花をつける大正時代。 まだまだ封建的な雰囲気も漂う弘前の街に 反発するような若者のグループがあった。 士族の二男や三男、 商家の跡取り息子などが結成した、 その名も「呑気倶楽部(のんきくらぶ)」。 その頃、弘前の人々は桜の季節になると 秋田の千秋公園、近場では 大円寺(現在の最勝院)や天満宮へ赴き、 弘前公園ではわずかに市民や商工会などが 花見を行うばかりであった。 弘前公園の桜を紹介しよう! 大正5年(1916)、 「呑気倶楽部」の面々は思い思いに珍装を凝らして 市内をパレード。 園内には市内の三大商店に頼んで 出店をしてもらい、 桜の下でどんちゃん騒ぎの宴を敢行し、 その様子を東京から呼び寄せた 活動写真の技師に紹介させた。

それが契機となり、大正7年(1918)には 商工会主催で第1回観桜会が開催。 戦時中には「時局と花の催し」に名を変え、 興行にも「国防」や「時局」の文字が多くなり、 国防一色になろうとも継続した観桜会だったが、 ついに昭和18年(1943)に中止された。 しかし、終戦の翌年、昭和21年(1946)には 早くも復活しているというから、 弘前人にとって城で行われる観桜会は 何にも代え難いものであったのだろう。

挿絵3

挿絵4

弘前公園、桜の銘木

老松と桜。深い緑が淡紅色をひときわ引き立 てる弘前公園には、銘木も数多く存在している。 二の丸与力番所から東内門の間には、明治15年 (1882)に植えられた「日本最古のソメイヨ シノ」。緑の相談所裏の「日本最大幹周のソメイ ヨシノ」も樹齢100年から120年と推定さ れている。二の丸の大枝垂れ桜は大正3年(19 14)、在弘宮城県人会から寄付された園内最大 のシダレザクラである。時期を同じくして植栽 されたのは本丸の「弘前枝垂れ」と棟方志功が命 名した「御滝桜」である。

挿絵5


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