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江戸時代から近代にかけての弘前を中心とした生活図鑑

祭・民族ノ編

東奥津軽山里海観図

『東奥津軽山里海観図(とうおうつがるさんりかいかんず)』の「祢布多祭」の図(県立郷土館提供)。元治元年(1864)に清白閑人(せいはくかんじん)が描いた。

刺し子を現代のファッションに取り入れてみる。

刺し子の魅力

過酷で長い津軽の冬を生き抜くために、農家の女性たちの知恵と手技から生まれた刺し子。津軽地方では、麻布に刺した幾何学模様が特徴的な「津軽こぎん刺し」が有名だが、年月を経るほどに糸が布に馴染み、着るたびに肌への優しさを感じさせる。日本画家・弘前ねぷた絵師の八嶋龍仙氏のコレクションの多くは藍染めの木綿に白糸の刺繍。浅葱色へと変色した風合いは実に趣深い。
元来、着古した着物や古布の端切れ等を幾重にも合わせて保温性を増し、糸を刺して補強した野良着ではあるが、「用途の美」「生活の美」を象徴する津軽の衣文化は、今や世界的にも類をみない誇るべき希有なアートとなっている。

こぎんコーディネート

左/着物柄が美しいロング丈の刺し子とキュプラサテンドレスでよりモードに。右/コットンワンピースとニットの間に 和柄衿の刺し子を覗かせて。

こぎんコーディネート

左/インディゴのコーディネイト。こぎんとジャガードで幾何学模様のコラボ。右/ロング丈の刺し子をコート風に。ニットと合わせてウォーム感をプラス。

現代ファッションとのコラボレーション

当て布をしたり端切れを繋いだ、つぎはぎだらけの衣服は今や「BORO(ぼろ)」と呼ばれて若い世代や外国人にも注目視され世界的な評価の気運が高まりつつある。時代背景や価値観、用途は違っても、バランスよく組み合わせることでトレンド(流行)に乗せることができる。
例えばナチュラルな風合いのワンピースや、「藍」で同類のデニム素材でカジュアルに。サテンドレスやレザーブーツで高級感を演出するなど、「着こなす」というより、ちょっと肩の力を抜いたスタイリングで味わい深い魅力が生まれる。古手木綿を継ぎ足し、補強を繰り返しただけの野良着に、存在感あふれるモダンな表情を見ることができるのだ。
古き良きものを懐に抱きながら、新しいものを貪欲に取り入れるという挑戦。いつの時代も必要不可欠なエコロジーの心である。

こぎんコーディネート

左/刺し子のダッフルコートと綿素材のワイドパンツでイージーシルエットに。右/和柄のマントを流行のショートサルエルパンツに合わせて。

こぎんコーディネート

左/ニットワンピースとこぎんのベスト。年齢を問わない女性らしいコーディネイト。右/肩のこぎんが美しい刺し子のベスト。ショッキングピンクで元気な印象に。

“ぼろ”の魅力

猿賀神社での神楽。
猿賀神社での神楽。

青森の厳冬と貧しさのなかに生まれた奇跡のテキスタイル・アート「ぼろ」。本県出身の民俗学研究家・田中忠三郎氏のコレクションの一部を収録し、「ぼろ」の美学を惜しみなく表現している。

『BORO つぎ、はぎ、いかす。青森のぼろ布文化』 小出由紀子・都築響一:著/アスペクト刊

●八嶋龍仙 【刺し子提供・モデル】(2009年当時)
旧岩木町出身。津軽伝統ねぷた絵師・日本画家。迫力ある線と色のにじみを多彩に使った鏡絵、慈愛あふれる見送り絵などねぷたの神髄を追い求めた作品が魅力。

●弘前こぎん研究所 【こぎん刺し提供】
こぎんの普及と製作・販売を中心に観光民芸品等の販売を行う。
■ 弘前市在府町61 ■ 0172-32-0595
■ 9:00〜16:30 土・日曜、祝日休

上記の参考文献・資料 『津軽こぎん』横島直道:編(日本放送出版協会)/「つがる古文書こぼれ話」弘前市立図書館後援会:編(北方新社)

上記の取材協力(2009年当時)
衣装協力 インクルーズ・Brunmel(ブランメル)
ヘアメイク協力 Bed(ベッド)