江戸時代から近代にかけての弘前城下や津軽地方を中心に、当時の生活を紹介する「弘前藩よろず生活図鑑」。ヘアスタイルや小物などのファッション。食事の規律や料理の技法、お茶、ファストフード、酒造りなどを含めた食。冷暖房、明かり、家屋の作りなどの住。その他、エコロジー、リサイクル、天気、旅行や娯楽、婚礼、医療や衛生、教育や養育、産業振興、城下の商売、金融、災害、言語など、ご紹介したい内容は多岐にわたりますが、ここでは主に祭りや民俗、食、旅、ファッションを紹介します。
津軽には祭りが多い。とりわけ夏から秋にかけては各地の神社仏閣で毎日のように行われる。祭りは八百万の神に願いや感謝の祈りを捧げる儀式であり、単調になりがちな日常を華やかに彩る「ハレ」の機会でもあった。神々や祖先を祀り互いの絆を深める「祭り」の風習は地域の人々に支えられ、時を超えて継承されている。
絶景を眺め、神社仏閣を巡り、温泉に浸かり、名物料理に舌鼓。現代にも通じる旅のスタイルは江戸時代には既に成立しており、旅行ブームも到来。庶民の旅が盛んになると旅に関する出版物の刊行も増え、旅への憧れをますます募らせたことだろう。「一生に一度」と願った旅を始め、当時の人々の生活の楽しみを探る。
高額な費用のかかる遠方への旅を楽しめたのは庶民でも生活に余裕のある者などごく一部で、多くはちょっとした余暇を利用して市中や近郊に出掛けるのを楽しみとした。季節の移ろいを五感で楽しみ「愛でる文化」が定着した江戸時代、弘前城下にも次々と新スポットが誕生し、観光名所として人気を博していく。
日本海からの冷たく湿った風が吹きつけ大雪に閉ざされる津軽の冬には「あたためる」道具が欠かせない。縄文の昔から人々の暮らしの中心に火があり、囲炉裏は暖を取ったり料理をするだけでなく、団らんの場でもある。また、冬の農閑期には柔らかで保温性のある稲わらで雪国に欠かせない様々な道具が編み上げられた。
江戸時代の文献をひもとけば、300年以上の時を超え、現代まで脈々と受け継がれてきた津軽の食が見えてくる。豊かな大地が育んだ良質な食材を味わい尽くした先人たちの見事な知恵が見えてくる。気候と風土に磨かれた津軽の食文化は、時代が変わってもなお色あせない魅力を持っている。
一年の半分近くを雪に閉ざされる北国・津軽。人々は春から秋にかけて豊富にとれる山菜や野菜、魚介類などの海・山・川・里の恵みを保存することで、長い冬を乗り越えてきた。厳しい気候風土の中で育まれてきた素朴でシンプルながら奥深い食文化。そこには、自然を愛し自然と共に生きてきた津軽人気質が現れる。